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問題
大問4は対角化に関する問題です.
解答
解答の方針
この問題を解答するためには固有値・固有ベクトルと対角化に関する2つの基本的な定理を知っていなければなりません.ここでは,この2つの定理と簡単な証明を載せておきます.
定理1
次正方行列 が 個の線形独立な固有ベクトルを持つならば, は必ず対角化できる.
定理1の説明
そもそも,対角化可能性は対角化行列 の逆行列 の存在( が正則であるということ)で決まります. の構成する列ベクトルが線形独立であれば, は正則になるので が存在することになります.
のときの証明
この定理の一般的な証明は計算が少し煩雑になるので のときの証明*1を示します.
を2次正方行列 の固有値とし,その各々の固有値に対する固有ベクトルを とします.すなわち,
が成立するとするということです.この状態で固有値が異なるとき,固有ベクトルが線形独立になるということを示すには のとき,
となるのが, のときのみ*2ということを示せばよいということです.
ここで,(3)の両辺に を左からかけると,
となります.ここで(1)と(2)を用いたことに注意して下さい.(3)と(4)をまとめると,
となります.また,
とおくと(5)は,
となり行列 は,ヴァンデルモンド行列という行列になります.また,この行列の行列式は となるので, が存在します.よってこれを(6)の右からかけると,
となり,
となります.また,固有ベクトルの定義より零ベクトルは固有ベクトルにはならないため
となります.
解答と解説
(1)
固有方程式 より
(2)
行列 が対角化不可能であるとき,定理2より は固有値として少なくとも1つの重解を持たなければなりません.今回場合は の取る値によって2通りの重解があり得るので場合分けによって調べていきます.
(ⅰ) のとき すなわち の固有方程式が重解1をもつとき
を解けばよく,係数行列を行基本変形すると
行列を方程式に戻すと,
(任意実数)とおくと,
この場合, は線形独立な固有ベクトルを2つしか持たないため,対角化不可能です.
(ⅱ) のとき すなわち の固有方程式が重解2をもつとき
を解けばよく,係数行列を行基本変形すると
行列を方程式に戻すと,
(任意実数)とおくと,
この場合, は線形独立な固有ベクトルを3つ持つため,対角化可能です.
以上(ⅰ)(ⅱ)より,対角化できないような の値は
のみになります.