ヨッシーの日記

いろいろかきます

【線形代数】サラスの方法を使わない固有方程式の解放について

今回は、数学の編入試験の勉強をしている方なら誰もが対策する「固有値固有ベクトル」の範囲についての編入TIPSです。正直、今回の題材となっている固有方程式の解法(固有多項式因数分解)ですが、人によってやりやすい方法が異なるのでこの方法が絶対良いという事はないですが、知っておいて損はないので是非とも読んでみて下さい。

固有多項式因数分解

2つの解法

固有多項式因数分解する方法は大きく2つあり、

(1)行列式をサラスの方法で展開し、因数定理と組立除法で因数分解する方法
(2)行列式の性質を使って行列式の次数を落としながら因数を見つける方法

があります。多くの方は(1)の方法を使っていると思いますが、今回は(2)の方法を紹介したいと思います。
そもそも、(1)の解法ではサラスの方法で大変な計算をして展開をした後に更に因数分解をしなければならなく二度手間ですし、それぞれの成分の絶対値の大きな行列を扱うときにサラスの方法を使うと、とても計算ミスを引き起こす可能性が高いです。これから説明する(2)は、サラスの方法を用いないので(1)ほど計算ミスを引き起こす可能性は低いと思います。(といっても2番も大変な計算をしますが)

例題

このような問題は具体的な問題を使って説明するのが一番だと思うので、例題を用意しました。

A=\begin{pmatrix}1 & 0 & -1 \\ 1 & 2 & 1 \\ 2 & 2 & 3\end{pmatrix} の固有値をすべて求めよ.

この解法では、基本的に固有多項式  \left |\lambda E - A \right| の次数を下げる過程で同じ行または列に共通因数が出てくるタイミングがあるときに、行列式から括り出して行列式の中身が2次式になるようにします。
 \begin{align} \left |\lambda E - A \right| &= \begin{vmatrix}\lambda - 1 & 0 & 1 \\ -1 & \lambda - 2 & -1 \\ -2 & -2 & \lambda - 3\end{vmatrix} \\ \\
&=\begin{vmatrix}0 & 0 & 1 \\ -1 + (\lambda - 1) & \lambda - 2 & -1 \\ -2 - (\lambda - 3)(\lambda - 1) & -2 & \lambda - 3\end{vmatrix} \\ \\
&=\begin{vmatrix}\lambda - 2 & \lambda - 2 \\ -({\lambda}^2 -4\lambda +5) & -2 \end{vmatrix} \\ \\
&=(\lambda-2)\begin{vmatrix}1 & 1 \\ -({\lambda}^2 -4\lambda +5) & -2 \end{vmatrix} \\ \\
&=(\lambda-2)(-2+{\lambda}^2 -4\lambda +5) \\ \\
&=(\lambda-2)({\lambda}^2 -4\lambda +3) \\ \\
&=(\lambda-1)(\lambda-2)(\lambda-3) \\ \\ \end{align}
\therefore \lambda = 1, 2,3 固有値

では次に、各行でどのような式変形を行ったか解説します。

【1行目〜2行目】
1列目から3列目の (\lambda - 1) 倍を引きました。今回は与えられた行列の1行2列成分が0だったので列に関する変形をしましたが、基本的には行変形をします。

【2行目〜3行目】
1行目について余因子展開をしました。余因子展開が使いこなせればいちいち1列目が1,0,0になるように行と列の交換をしなくて済みます。

【3行目〜4行目】
1行目の共通因数 (\lambda-2) を括り出しました。

【4行目〜5行目】
残った2×2の行列式を展開しました。


このように、行列式の性質を使って行列式を変形していけば、わざわざサラスの方法で展開してから因数定理と組立除法で因数分解する必要はありません。この方法が気に入られた方は、是非この方法で固有多項式因数分解してみて下さい。