今回は,線形写像の像の基底を求める際に,出来るだけ基底ベクトルの数字を出来るだけ簡単なものにする方法を紹介したいと思います.この知識は線形代数の本質とは少し離れますが,編入受験テクニックとして知っておくと,とても便利な知識なのでここで紹介したいと思います.
線形写像の像と基底の求め方(よく使う方法)
線形写像の像の定義
まず像の定義から
簡単に像の意味を言うのであれば,「線形写像によって移されるベクトルをすべて集めてきた空間」です.今回はこのような像のイメージや意味は置いておいて単純に像の基底を求めることだけに焦点を当てます.
基底の求め方
例題を使って復習しましょう.
線形写像 を
で定める.このとき, の基底を求めよ.
まず,(標準基底に関する*1)表現行列の階数が像の次元になることを利用して,次元を先に求めます.つまり,行列を行基本変形します.
よって,
より像の次元が2だと分かります.
次に像の定義から基底を求めます.
ここで,基底みたいなものが3つ出てきた訳ですが,先程も述べた通り像の次元は2なので基底が1つ不要です.このような場合は,残ったベクトルが線形独立になるようにベクトルを1つ削除すればOKです.つまり
のようにします.そして残ったベクトルを像の基底として良い訳ですが,こうして出来たベクトルは表現行列の成分をそのまま持ってきたので,問題によっては数が大きな場合もあります.「像の基底を求めよ」という問題なら別にこのままで良いのですが,この後に求めた基底を使って問題を解くみたいな問題では厄介です.実際,電通大の編入試験ではよくこのような問題が出題されます.