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【過去問解答】H31信州大学編入試験問題 数学 大問1

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問題

大問1は1変数関数の微分積分に関する問題です.

大問1の問題文

解答

解答の方針

まず,(ⅱ)にあるような微分積分が混じった方程式が出てきたときは基本的に両辺を微分して積分を消すようにします.本問題では,積分に関数(ここでは-2x)が掛かった形になっているので積の微分でバラバラにした後に,元々の式と連立して積分を消去して,2階の線形微分方程式に帰着させます.

この問題を解く為には「微分積分学の基本定理」という重要な定理をちゃんと理解している必要があります.微分積分学の基本定理とは

関数 f(x) において

\displaystyle \frac{d}{dx}\int_{a}^{x}f(t)\, dt=f(x)

が成立する.ただし,a は定数とする.

という定理です.この定理は一見すると微分積分が混じっていて複雑そうに見えますが,微分積分では一番大事である「微分積分の逆の演算である」ということを主張している定理です.

解答と解説

(1)

まず,(ⅱ)の式の両辺を x について微分しますが,その際に先ほどの微分積分学の基本定理を用いることに注意します.


\displaystyle -f'(x)+(1+x)f''(x)=-1-2\int^x_1 \frac{f(t)}{t^3} dt -2x\frac{f(x)}{x^3}-\frac{f'(x)x-f(x)}{x^2}

次に,上の式が分数になっていて面倒なので,両辺に x^2 をかけて分母を払います.


 \displaystyle -2x^2 f'(x)+x^2(1-x)f''(x)=-x^2-2x^2\int^x_1 \frac{f(t)}{t^3} dt -f(x)-xf'(x) \tag{1}

(1)は積分項である \displaystyle -2x^2\int^x_1 \frac{f(t)}{t^3} dt を含むので,このままでは解けません.そこで,元々の式を整理して無理やりこの形を作ります.その結果が下式の


\displaystyle -2x^2\int^x_1 \frac{f(t)}{t^3} dt = x(1-x)f'(x)-x+x^2+f(x)

です.これを(1)に代入すると,

\displaystyle x^2(1-x)f''(x)=-x

のように綺麗になるので答えは,

\displaystyle f''(x)=\frac{1}{x(x-1)}

となります.

(2)

小問(1)で微分方程式が導けたので,後は微分方程式を解いて一般解を求めた後に,(ⅰ)の境界条件を代入すれば解が定まります.まず,先程の式の右辺を部分分数分解*1すると


\displaystyle f''(x)=\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x}

となります.これで積分が実行出来る形になったので,任意定数を C として積分すると,


\displaystyle f'(x)=\log{|x-1|}-\log{|x|}+C

問題文より, 0\lt x\lt 1 なので対数の絶対値記号は外せて,


\displaystyle f'(x)=\log{(1-x)}-\log{x}+C

のように書けます.よって一般解は新たに出てくる任意定数を D として,


 f(x)=-(1-x)\log{(1-x)} + x -x\log{x} +x +Cx+D

境界条件を代入すると,C=-2D=0 が求まるので答えは,


 f(x)=-(1-x)\log{(1-x)}-x\log{x}

となります.

*1:このレベルの部分分数分解は暗算で出来るようにするとよい