今回は線形代数の教科書で扱われているのに編入の参考書ではほとんど扱われていない*1「基底の変換行列」の話をします。
電通大ではこの知識が前提とした線形変換の表現行列の問題が過去に出ているので、その話をするための前提知識だと思って聞いて下さい。
基底の変換行列とは
定義
ベクトル空間 の基底として と を考える。これらの2組の基底が
というような関係を満たしているとき、行列
を
から
への
基底の変換行列という。
導出
上で紹介した基底の変換行列を、基底の性質を使って導きます。
まず、それぞれの基底はベクトル空間 に属しているので の各ベクトルは別の基底である の線形結合で表せます。それを書き下すと
となります。これらの式を1つにまとめると
となり、上で紹介した定義式が得られます。
また、基底の変換行列 は 次正方行列であり、正則行列です。(証明は省略します*2)
基底の変換行列の成分に関する定理
定理
ベクトル空間 の要素 の基底 と基底 に関する成分をそれぞれ
とし、
から
への基底の変換行列を
とするとき、次が成り立つ。
証明
から への基底の変換行列を とすると、基底の変換行列の定義式の両辺に右から をかけると
が成立します
また、ベクトル空間 の任意のベクトル に対して次が成立する。
ここで、2行目から3行目への変形は(1)を用いました。一方で、別の基底を用いると
(2)と(3)を比較すれば