今回から、実際に僕が大学編入受験の為にしてきた具体的な受験勉強の方法や使った参考書などを紹介していこうと思います。一応注意はしておきますが、勉強方法は人それぞれ様々で人によって向き不向きがあるものです。ですので、実際に自分が勉強する時は色んな人のブログや体験談を聞いて自分に合ったものを取り入れていって下さい。
数学の勉強について
電通大の試験の傾向
微分積分
傾向としては多変数関数の問題がよく出ます。微分の分野では編入試験ではおなじみの極値問題からチェインルール(合成関数の導関数)を使う問題まで様々な問題が出題されることが予想されますが、最近は極値問題が出題されることが多いようです。また、積分は重積分からの出題が殆どで毎年ほぼこの傾向通りに出題されています。電通大は編入では珍しい3次元極座標に変換する3重積分をよく出すのでしっかり対策しておきましょう。
線形代数
年度により問題構成が変化しますが、最近の試験は大門2つの内1つはベクトル空間、もう一つは固有値固有ベクトル対角化の問題が出題されています。固有値問題に関してはどうしても計算量が多くなるので計算ミスを引き起こしやすい問題ですので、本番はしっかり検算まで行いましょう。ベクトル空間は電通大特有の問題が毎年出題されています。また、ベクトル空間の授業がない高専もよくあるのでベクトル空間の知識が全く無い受験生の方もいるかと思います。そういう方は一度参考書などで勉強してから過去問を解いて下さい。電通大のベクトル空間の問題は大まかに、ベクトル空間の定義と部分空間、基底と次元、線形写像の定義と一般の表現行列、線形写像の像と核、内積などを勉強しておけば十分かと思われます。
大学編入の数学参考書
どの参考書から始めるか
これから編入の勉強を始めていく人にとって一番気になるのは恐らく「まずどの参考書から手を付ければ良いか」だと思います。ハッキリ言ってしまうと「勉強する人による」というのが僕の答えです。高専の試験でいつも欠点ギリギリの点数を取っていた人(こういった人が編入をするかどうかはさて置き)、試験は詰め込み型で毎回の試験は一夜漬けで乗り切った人で低学年の勉強は全く忘れてしまった人などは、教科書の復習から始めるのがベストです。そうでない方は編入の参考書を買って勉強して良いかと思います。
僕は、編入の数学参考書は大きく2つに分けられると思っています。1つは「著者が作った問題集」でもう1つが「過去問題集」です。前者は著者が編入で出るような問題を解くために必要な基礎問題をまとめた問題集などのことで、後者は色んな大学編入の過去問題を集めた問題集です。また圧倒的に後者の方が難しいです。以上のことを参考にして、次から挙げていく参考書の紹介を見ていって下さい。
参考書紹介
編入数学徹底研究
前述の分類で「著者が作った問題集」に当てはまる問題集です。編入数学の問題集では最もメジャーな参考書で、ほとんどの編入受験者はこの本をやっていると言っても過言ではないです。問題構成も標準的で一問一問にしっかり解説が載っているので教科書にもなります。難易度もそれ程高くない*1ので大抵は編入の数学勉強一冊目はこの本で良いかと思います。
注意しなければいけないのは、この問題集(というかこのシリーズ)は特に解答に関しては著者の癖が強いです。この参考書を過信しすぎるのは少し危険だと思うので、色んな著者の参考書をやって下さい。
僕は1~13, 15章を1周しました。
大学編入のための数学問題集
前述の分類で「過去問題集」に当てはまる問題集です。僕が一番オススメする問題集で、実際僕が編入数学の勉強で取り組んだ1冊目の本です*2。この本の良いところはとにかく解説が丁寧で本の2/3が解答という程、解説が沢山あります。解答のページにはそれぞれの問題を解くのに必要となる定理や性質がなどが囲みになっており、そこに書いてある事は役に立つ事ばかりで、教科書には書いてないような細かい事も書いてあります。また、解答の欄には付箋のマークで計算のテクニックや解答のポイントなどが細かく書いており、分かりやすいです。
ですが、問題のレベルも結構高く、1冊目に取り組むと十中八九で挫折します。ですので、前述の「編入数学徹底研究」などで基本となる問題を取り組んでからこの問題集に取り組むことをオススメします。
注意しなければならないのは、この問題集は大日本図書の「新〇〇シリーズ」の教科書で学習していることを前提にしているので、それ以外の教科書で勉強していた人は引っ掛かる場所があると思います。(実際、僕は森北出版の教科書で数学を習っていた)逆に、この教科書を使っていた方でしたら、とてもオススメ出来る問題集です。
僕は1~4章(4章は複素関数のみ)を2周しました。
編入数学過去問特訓
前述の分類で「過去問題集」に当てはまる問題集です。僕は信州大学の受験に伴って、色々な大学の過去問を沢山解く為に買いました。この問題集は過去問を集めた問題集の中では簡単な問題が多い方なので取り組みやすいです。このレベルでしたら、地方国立大の受験生や口頭試問で数学がある人は丁度いい問題集だと思います。前述した「大学編入のための数学問題集」があまりにも出来ない場合は先に此方をやるのも良いかも知れません。
僕は1~5章を1周しました。
大学編入試験問題 数学/徹底演習
前述の分類で「過去問題集」と「著者の問題集」両方に当てはまる問題集です。最初に言いますが、僕はこの本で勉強はしていません。ですが、周りの人のレビューや編入体験記などから多少この本の知識がありますので、紹介しておきます。この本はよく知られている編入数学の問題集では、一番難しいと言われています。ハッキリ言って僕はこの本はオススメではありません。問題構成などを多少パラパラ見たのですが、編入ではあまり扱われないような問題や数学科の編入試験で問われるような内容も扱っています。あと個人的に森北出版はあまり好きではないです。ですが、この問題集をオススメする方もいらっしゃいますので、これも人によるのかなぁと思います。
ベクトル空間や複素関数論について
参考書紹介については以上ですが、最後に特に電通大を受験する方にとってはネックになる問題を挙げておきます。高専では基本的なカリキュラムに線形代数のベクトル空間や複素関数論は無いので、高専によってはこれらについて扱っていない高専があります。(むしろ多いみたい)
僕はこれらは授業で扱って頂いたのでそこまで問題にはならなかったのですが、今後電通大を受験する方の少しでも役に立てればと思い、それぞれに対するアドバイスを載せておきます。
ベクトル空間
ベクトル空間を編入で扱う大学はそこまで多くはないのですが、僕が知ってるのは、電通大、筑波大などがあります。ベクトル空間自体はとても抽象度が高く、とてもとっつきにくいと思います。ですが、これをしっかり学ぶと線形代数の本質が見えてくるので、勉強する価値ありだと思います。ベクトル空間を勉強するコツは、まずは数ベクトル空間の理解を深めて、ベクトル空間を図形でイメージ出来るようになれると良いかと思います。(例えばdim-2のベクトル空間が原点を通る平面であるとか)
僕は特にベクトル空間専用の参考書は買っていないのですが、独学する場合は参考書を買って勉強するべきです。
気になった参考書をいくつか挙げます。
[rakuten:book:17032877:detail]
とにかく沢山問題を解いて理解したい方はこの問題をやると良いと思います。数ベクトル空間以外の問題も豊富なのでGOOD。
また、参考書ではないのですが筑波大の照井章先生の「線形代数Ⅰ、Ⅱ」の授業がYoutubeにアップロードされているので、これも参考になると思います。(そこまでちゃんと観ていません)
線形代数I (2013) (1) ガイダンス (Linear Algebra I (2013), Lecture 1) - YouTube
線形代数 II 2017 (1-1) ガイダンス - YouTube
これも動画になりますが、この講義も分かりやすかったので紹介しておきます。ベクトル空間の公理をしっかり説明しています。
複素関数論(関数論)
この分野は人によって「複素解析」と言ったり「複素関数論」と言ったり「関数論」と言う人がいるので注意が必要です*3。
複素関数論もベクトル空間と同様になかなかとっつきにくい分野です。アドバイスとしては、もともとの定義をしっかりと覚えておく事が大事かと思います。電通大の試験対策をする人でよく「留数定理とその応用」だけ勉強される方がいるのですが、結構無理があります。留数定理は複素積分を定義する所からスタートしてどんどん積み上げていくものです。留数定理自体の計算は難しくなく、前提知識を知らなくても計算は出来るのですが、これの元々が分からないとひねった問題が出た瞬間に解けなくなります。ですので、出来れば横着な勉強法はしない方が良いと思います。
これも気になった参考書を挙げます。
参考書ではありませんが、慶応大学の山本直樹先生の「物理情報数学A」という授業がYoutubeにアップロードされているので、これも参考になると思います。この先生は複素関数論の教科書を書いている有名な先生です。(この動画もちゃんと観ていません)
Wolfram Alpha という便利ツール
最後に、Wolfram Alphaというツールを紹介します。これはオンライン上で検索窓に入力した数式を解いて答えを表示してくれる滅茶苦茶便利なツールです。Wolfram AlphaはMathematica上で構築されているので基本的にはMathematicaの構文で計算出来るのですが、2019年6月に日本語版のWolfram Alphaも公開され、日本語による入力も対応したらしいです。編入試験の過去問の解答は基本的に出回っていないので、こういったツールはとても重宝しました。